仕事が遅い人に朗報!?―「問題発見能力」や「創造性」が高い人ほど仕事が遅い?


公開日:2014年11月11日( 最終更新日:2018年3月8日 ) [ 記事 ]
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なんで、そんなに時間がかかるの!?

同じことをやらせても、なぜか他の人に比べて、時間がかかってしまう……。

そんな人にイライラさせられたことが、誰にでも一度くらいはあるのではないかと思います。

あるいは、逆に、自分でも気付かぬうちに人をイライラさせてしまっていることもあるかもしれませんし、自分でも遅さを自覚していて、悩んでいる方もいるかもしれません。

仕事が遅くて悩む女性

特に仕事の場面では、「仕事が遅い」ことを、まるで「無能の代名詞」であるかのように扱う人すら見かけることもあります。

ですから、「仕事の遅さ」でが原因で、イライラしたり、イライラされたりとギクシャクしてしまうことも少なくないでしょう。

しかし、実は、「仕事が遅いこと」が必ずしも「能力が低いこと」ではないようなのです。

それどころか、「仕事が遅い人」の方が、「能力が高い」ことすらあるようなのです。

今回は、ある研究結果を参考にしながら、「仕事が遅い人が持つ能力」について考えてみたいと思います。

仕事が遅い人ほど能力が高い? ― 常識に反する驚くべき研究結果

では、さっそくその研究結果を紹介しましょう。

一九六〇年代半ば、その後すぐに世間に名を馳せることになる、シカゴ大学の社会科学者――ジェイコブ・ゲッツェルスとミハイ・チクセントミハイ――は、クリエイティビティというつかみどころのないテーマに着手したところだった。一九六四年、チクセントミハイは手始めに、近くのシカゴ美術館付属美術大学の四年生、四〇人弱を被験者として採用した。まず学生たちを大きなテーブルが二つ置かれたスタジオへ連れて行った。片方のテーブルには、奇抜なものから平凡なものまで、絵画の授業でよくつかわれる静物画の材料が二七個置いてあった。チクセントミハイは学生に、そのかからいくつでも好きな物を選んで、もう片方のテーブルに配置して静物画を描くように指示した。若き芸術家たちの取り組み方は二つに分かれた。

ダニエル・ピンク著 神田昌典訳 「人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!」講談社(2013年)P.142より


チクセントミハイ博士といえば、“和楽の道”ではもうお馴染みの、フロー理論で知られる有名な心理学者ですね。

そのチクセントミハイ博士たちが行った実験で、芸術家の卵たちの創作に対する態度は二つに分かれたといいます。

その二つの姿勢とは、いったいどのようなものだったのでしょうか?


少数の材料を検証して、絵の構想を素早く組み立て、すぐに静物画に取りかかった学生たちもいた。一方で、もっと時間をかける学生もいた。いくつもの材料を手に取って、ああでもないこうでもないと何度も配置を直し、静物画に取りかかってからも時間をかけた。

ダニエル・ピンク著 神田昌典訳 「人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!」講談社(2013年)P.142


これは、一般的な仕事にあてはめれば、次のように例えることができるでしょう。

  • 数ある情報や選択肢の中から、必要と思われるものを迅速な意思決定で選び出し、素早く仕事を仕上げる人
  • 数ある情報や選択肢を慎重に検討したうえで仕事に取りかかり、一旦取りかかった後でも、状況に応じて方針変更をしながら仕事を仕上げる人

もちろんこれは、良い言い方をした場合で、悪い言い方をすれば「ろくに考えずに突っ走る人」、「優柔不断でなかなか決められない人」と見られてしまうこともあるでしょう。

では、この違いはいったいどうして起こるのでしょうか?また、この違いがどのような結果をもたらしたのでしょうか?


チクセントミハイによれば、前者の学生は問題を“解決”しようとしていた。どうしたらいい絵を描けるだろうかと考えたのだ。後者の学生は、問題を“発見”しようとしていた。どのようないい絵を描けるだろうかと考えたのだ。

チクセントミハイはその後小さな美術展を開いて、美術専門家に学生にたちの作品の評価を依頼した(このときの専門家たちはチクセントミハイの研究内容を知らなかったし、作品の出展者についても知らなかった)。その評価をまとめると、問題発見タイプの学生の作品のほうが、問題解決タイプの学生の作品よりもはるかにクリエイティブであるという評価が下されたことがわかった。一九七〇年、チクセントミハイとゲッツェルスは、卒業して社会人となっていた被験者の学生たちを追跡調査して、生活の実態を調べた。半数が美術の世界とはすっかり縁が切れていた。もう半数はプロの芸術家として仕事をしており、成功している者も多かった。後者の学生グループがかつてどのような学生だったかというと、ほぼ全員が問題発見タイプの学生だった。

ダニエル・ピンク著 神田昌典訳 「人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!」講談社(2013年)P.142 ~ 143より


チクセントミハイ博士は、早く作品を仕上げた学生と、時間がかかった学生の違いは、“問題解決”を志向するのか、“問題発見”を志向するのかの違いによるものだと見たそうです。

そして、長期的に見たときに、芸術家として成功していたのは、時間をかけて作品をつくった“問題発見”タイプの学生だったということです。

この結果は、偶然によるものなのでしょうか?それとも、ある程度一般的に成り立つ法則性のあるものなのでしょうか?


その後の調査ではほかの学者たちも、芸術、科学、その他の世界において創造的飛躍を遂げやすい人は問題発見タイプである、という傾向を見出した。

ダニエル・ピンク著 神田昌典訳 「人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!」講談社(2013年)P.143より


なんと、他の学者たちによる調査でも、“問題発見”を志向する人の方が創造性が高い傾向がみられたそうです。しかもそれは、芸術の分野に留まらず、科学やその他の分野でも見られた傾向だということです。

“問題解決”志向と“問題発見”志向 ― その特徴と違い

確かにそれは、納得がいくような気がします。

例えば、数学の問題を解く場面を思い浮かべてみてください。

教科書に書かれている公式を素早く覚えて、テキパキと問題を解いてしまう人と、いろいろと試行錯誤しながら教科書との睨めっこが続くばかりで、一向に問題を解き始めない人がいたとします。

「この公式を導く過程は本当に正しいのだろうか?納得できるまで考えたい。」
「この公式を使う以外の解き方はないだろうか?」

試行錯誤をしている人はこんなことを考えていたとしましょう。

与えられた通りに問題を解く(解決する)ことに意識を向ける人と、問題の背景や前提にまで疑問をもって新たな問題を見いだそうとする人。

まさに、“問題解決”志向と、“問題発見”志向と言えるでしょう。



もちろん、仕事の速さでいえば問題解決タイプの方が上でしょう。

“問題解決”志向の人の視点から、“問題発見”志向の人を見れば、「グズグズ考えてないで、さっさと解けばいいのに」と見えてしまうこともあるかもしれません。


しかし、もし公式がそのまま当てはめることが出来ない問題に出会ったとしたらどうでしょう?

公式の背景や意味を理解せずに、機械的に問題の解き方を覚えただけの人には対処は難しいかもしれません。

これは私の見聞きした狭い範囲の例ではありますが、確かに、小学校の時に要領よく算数の問題を解いていた「算数が得意な子」が、中学・高校と進むにつれて数学が苦手になってしまったという例はよく見かけるような気がします。

そして、それとは逆に「こんな公式が成り立つなんて納得いかない!」と悩んでしまい、小学生の当時は「算数が得意な子」には敵わないと見なされていた子が、その後「算数が得意な子」を追い抜かしていくということも少なくないように感じます。


さらに、「公式の応用が必要な問題」どころか、「誰も“正解のある問題”与えてくれないような状況」ではどうでしょう?

“問題解決”志向の人にとっては、解決すべき問題が与えられていないのだから、文字通りその状況は「なにも問題はない」ように見えるでしょう。

一方で、“問題発見”志向の人には、状況的にはまったく同じでも、まだ誰も気付いていない新たな課題が見えているかもしれません。

“問題解決”志向の人にとってはまだ何も見えていない状況でも、“問題発見”志向の人は新たな課題を発見して取り組んでいくことができるのです。

そして、この他の人には見えていない課題を見つけ出す力は、まさに、創造性に直結する力といえます。


そう考えると、最初はあれこれ考えて、器用に問題を解いていく人にかなわなかった人のほうが、長い目で見れば、新しい問題を素早く解決したり、誰も足を踏み入れたことがないような領域に踏み込み、より創造的な活動ができるようになるのかもしれません。

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仕事が遅くても、速くても。そんなことで、悩む必要はない!

ここまでお読みいただければ、もうおわかりだと思います。

もしあなたが、仕事にしても、勉強にしても、趣味の活動にしても、あれこれ考えてしまって上達に時間がかかってしまい、器用な人にどんどん置いて行かれているような気持ちになってしまうことがあったとしても、必ずしも「私は仕事が遅いのでは?」と心配になる必要はないのです。

「あれこれ考えてしまう」ということは、マニュアル的に“問題解決方法”を覚えてテキパキとこなしていく器用な人には見えていない、新たな“問題を発見”する能力を持っているということだからです。


もちろん、仕事が遅いからといって、必ずしも“問題発見”能力が高いのだと言えるわけではないでしょう。

しかし、仕事が遅いからといって、必ずしも能力や適性が低いというわけでもないのです。

それどころか、ここまでに説明してきたことから考えれば、能力が高い人ほど、十分な時間をかけて仕事に取り組もうとするとすら言えるかもしれません。


ですから、もしあなたが仕事に時間がかかるタイプだったとしても、速いタイプだったとしても、そのことで自分を否定しないことです。

「私は、あれこれ考えてしまって、新しいことがなかなか上達しない」
「私は、ついつい深いところまで考えずに、表面的な理解で終わってしまう」

そんな風に悩む必要はまったくないのです。力を抜いてリラックスしてください。

悩む必要はない。力を抜いてリラックスする女性


なぜならば、“問題解決”志向も“問題発見”志向も、一概にどちらが勝っているなどと言うことはできないからです。

“問題解決”が求められるとき、“問題発見”が求められるとき

仕事の場面では、深い理解などせずにマニュアル通りの対応でもいいから素早く仕事を片付けることが要求されることは多々あります。そうしなければ、誰かに迷惑をかけてしまうことも少なくありません。

逆に、お手軽にマニュアル対応を繰り返していたのでは、いつまでたってもその仕事が深まらないこともあるでしょう。


では、どちらの対応をするかを、いったいどのように決めればいいのでしょうか?

一つの判断基準は、緊急性や重要性です。

なにが何でも明日までにデモンストレーション用の装置を組み立てなければならないという切羽詰まった場面を想像してください。

そんな時には、「ここを組み立てる順番を入れ替えた方が効率がいいんじゃ……」というようなことは考えずに、それまでの経験から予想される確実性の高い方法で組み立てる方が得策の場合が多いでしょう。

なぜならば、ちょっとした変更であっても、予想もしていなかったような問題が発生することがあるからです。最悪の場合には、どんな努力をしても、もう明日の完成は不可能なほどのトラブルが起こってしまう可能性も否定できません。

(私は、モノづくりの現場は比較的知っているほうだと思っていますが、そんな場面は本当にたくさん目にしてきました。実際、同じエンジニア同士でも、その装置のことを知らない技術者であればまったく気付かないような、本当にほんのちょっとしたような小さな違いで、装置が不具合を起こすということも少なくありません。)

そんな時には、マニュアルがあるならマニュアル通りに。マニュアルがない場合でも、なるべく確実性が高い方法で作業をした方が賢明でしょう。


しかし、時間に余裕があり、予想外の出来事が起こっても、それを吸収できるような場合には、冒険が必要になることもあるでしょう。

例えば、期日が迫っているわけでもなければ、その装置が重要な場面で使用されるわけでもないので、仮にトラブルが発生してしまっても大きな問題にならないような場面です。

そんな場合には、問題が起こっても、その問題は十分吸収することができるでしょう。

それどころか、むしろトラブルが起こってくれた方がありがたいことすらあるでしょう。なぜならば、そういった余裕のある時にトラブルの芽を見つけ出し、対策を打っておくことができれば、後々、失敗できない場面でそのトラブルを避けることが出来るからです。

そして、そういった経験を重ねるうちに、“公式の応用”が要求されるような場面でも、トラブルの芽を予測して手を打ちながら、素早く仕事を仕上げられるような能力を高めることもできるでしょう。

それは、マニュアル対応しか経験したことがない人では太刀打ちできる領域ではありません。

さらに言ってしまえば、そういったトラブルをきっかけにして、なにか新たな発見につながることすらあり得るはずです。

例えば、これまでよりも効率的な組み立て方法が見つかったり、機能や性能を高めることが出来る部品形状のアイディアが得られるかもしれません。まったく別の新製品につかえそうなアイディが見つかることもあるでしょう。

逆に言えば、余裕があるにもかかわらず、挑戦をしないでいれば、せっかくの飛躍のチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。

このように緊急性や重要性の視点から、マニュアル的な“問題解決”志向の対応をするか、より掘り下げた“問題発見”志向の対応をするかの判断をすることが出来るのです。

ここで、少しだけ蛇足です。興味がない場合は、ここは読み飛ばしてください。

このことを書くと、記事の方向性が見えにくくなり、記事のキレも悪くなってしまうので、触れない方が記事の見栄はよくなるとは思うのですが、大切なことなので蛇足として書いておこうと思います。

上で書いた、失敗できない場面では確実性やスピードを優先して“問題解決”志向で、失敗してもそれを吸収できる余裕がある場面では探究を優先して“問題発見”志向で、という考え方は多くの場面で得策であることは間違いないと思います。

しかし、失敗できない場面で選んだいつもなら堅実なやり方が凶と出ることもあり得ますし、逆に、思い切った挑戦をしたことが結果的に吉と出ることだってあり得ます。そして、その吉や凶だって、いつまたひっくり返るかわかりません。

その意味では、上に書いた原則は得策の場合が多いにしても、絶対的な答えではありません。結局は、「禍福は糾える縄のごとし」、「人生に失敗はない」の精神が大切なのかもしれません。

また、“問題発見”志向で経験を積んだ人でなければ、失敗できない場面で思い切った挑戦をして、さらにその挑戦を結果に結び付けていくなどという芸当は出来ないだろうという側面もあると思います。

あなたの人生を変える、“問題解決”、“問題発見”との付き合い方

もう少し、別の判断基準も考えてみましょう。

もうひとつの判断基準は、得意 / 不得意、好き / 嫌い から選ぶ方法です。

そして、こちらこそが、私がこの記事で伝えたかった本題でもあります。

「好き / 嫌い で選ぶ」などと言うと、「仕事は好き嫌いでするものじゃない!」と思われる方もいるかもしれません。

しかし、実際、ビジネスの分野でも「コアとなる技術やサービスは自社で深めて、それ以外はアウトソースしよう」という言葉をよく耳にします。

「コア技術・サービス」、「アウトソース」などと言えばそれっぽく聞こえますが、これは「得意なこと、好きなことは自分でするけど、苦手なことや嫌いなことは、それが得意な人に任せます」と言っていることに他なりません。

もちろん、アウトソーシングの利用については色々と問題点が指摘されているとは思いますが、「好きなこと、得意なことは自分でやって、苦手なことや嫌いなことは、それを好きで得意な人に任せる」というベースの考え方には、私は賛成です。


そしてこの考え方こそが、あなたの人生を、一般的な常識とはまったく違った素晴らしいものに一変させてしまう可能性を秘めているのです。

それは、あなたの“天与の才能”に出会い、開花させ、その才能とともに生きていく道を示してくれるものです。


そのことについては、また別の記事に譲ることにします。

もう「才能がない」とは言わせない!―苦手意識に隠された“天与の才能”を見つける方法


今回の記事から感じ取っていただきたいことは、“問題解決”志向で仕事が速い人も、“問題発見”志向で仕事が遅い人も、そんなことで悩む必要はないということです。

なぜならば、それは一人ひとりに与えられた個性(才能)であり、付き合い方しだいで、その個性(才能)は活かすことも殺すこともできるからです。

生まれ持った、天から与えられた個性(“天与の才能”)は大きく変えることは難しいかもしれません。

しかし、“天与の才能”自体を変えることは出来なくても、付き合い方を変えることは出来るはずです

そうだとしたら、その個性(才能)自体に悩むよりも、付き合い方を変える方が、人生“楽”だし、“楽しい”に決まっています

この個性(才能)との付き合い方についても、上で予告した記事で触れることができればと思っています。

<初めての方へ : 和楽の道について


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