アミ 小さな宇宙人―大人こそ読むべき、子供向けの物語


公開日:2013年10月24日( 最終更新日:2018年3月8日 ) [ 記事 ]
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ふと、昔の悩みを思い出して、

「なんで、あんな簡単なことに、あそこまで悩んでいたんだろう?」
と不思議に思ってしまうことは、誰にでもあるのではないかと思います。

あとから振り返ってみると、乗り越えてしまった課題は簡単に見えるもので、思い悩んでいた自分がバカらしく感じられてしまったりするものです。

いまこの記事を読んでいるあなたも、もしかしたら、あなたの人生や、あなたの生きている社会に問題が山積みになっているように感じて、何かを思い悩んでいるかもしれません。
しかしもし、明るい希望に満ちた未来を先に知ることが出来れば、乗り越えてしまった課題がバカらしいほど簡単に思えるのと同じように、今あなたを悩ませている問題も少しは軽くなるかもしれません。
今回は、そんな未来と出会うことが出来る(かもしれない)物語を紹介したいと思います。

あまりもったいぶっても仕方がないので、さっそく紹介していきましょう。

アミ 小さな宇宙人

その物語というのは、『アミ小さな宇宙人』という本です。

アミ小さな宇宙人 (徳間文庫)

著者はエンリケ・バリオスさんというチリの作家で、この本は世界11カ国で翻訳され、ベストセラーになっているそうです。表紙や挿絵は『ちびまるこちゃん』で知られるさくらももこさんが担当しています。


日本にも熱心なファンの方がいて、この物語をさらに多くの人に知ってもらいたいということで、「アミプロジェクト」というアニメ化のプロジェクトも存在しているようです。

私は、このアニメ化プロジェクトに特に関わっているわけでもなく、メンバーの方と面識があるわけでもありませんが、微力ながら応援させてもらいたいということで、この場を借りて「アミプロジェクト」のページを紹介させていただきたいと思います。

アミプロジェクト

また、この『アミ 小さな宇宙人』には、続編として『もどってきたアミ』、『アミ 3度めの約束―愛はすべてをこえて 』という本も出ています。

アミ小さな宇宙人 (徳間文庫)もどってきたアミ―小さな宇宙人 (徳間文庫)アミ 3度めの約束―愛はすべてをこえて (徳間文庫)

私がアミを初めて読んだのは1年以上前で、別の本を買おうとしている時にたまたま見つけて、評判がよさそうなので試しに読んでみようという程度の感覚でした。

しかし、読み始めてみるとページをめくる手が止まらなくなってしまい、直ぐに続編も取り寄せて一気に読んでしまったのをよく覚えています。

あらすじと感想 ― 大人こそ読むべき物語

内容としては、主人公の少年ペデゥリートが、小さな宇宙人のアミと出会い、アミとの友情を深めながら様々なことを学んでいく物語です。(2巻目以降では、ビンカという他の星の女の子も登場します)

先にストーリーをバラしてしまっては面白くありませんので、ここではストーリーに触れることはしません。

小学生でも読めるようなシンプルな文章でありながら、一度読み始めると大人でも不思議と引き込まれてしまう物語だったということだけお伝えしておこうと思います。


本の中には、こどもと、こどものこころをもった大人に向けて書かれた物語だと書かれていますが、子供向けの物語という枠で捉えてしまったばかりに、大人が見逃してしまってはもったいないくらいの示唆に富んだ物語です。

こどものこころを忘れてしまった大人にこそお勧めしたい一冊です。
とても優しい語り口で書かれた本ではありますが、よくありがちな、なんとなく聞こえのいい言葉が並んでいるような類の本ではなく、人生についての深い洞察を与えてくれます。

この本をきっかけに人生観や世界観がまったく変わってしまったという人もいるくらいで、私自身も、疲れたときや、行き詰まりを感じた時に読むと、元気ややる気が出るだけでなく、新しいインスピレーションが得られることもあります。

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アミは実話?それとも、矛盾だらけの物語? ― そんなことよりも大切なこと

もちろん、好き嫌いの分かれがちな内容であることは間違いないと思います。

この物語が実話だと信じているというほどのファンの方がいる一方で、納得がいかない点があったり、違和感を感じる点があったりで好きになれないという人がいるのも、知っています。

しかし、この本のすべてを妄信してしまうのも考え物ですし、食わず嫌いももったいないことです。
大切なのは、この物語が実話であるとか、納得いかない点があるなどと議論することではなく、自分の人生にこの物語を役立てることが出来るかどうかだと思います。
どんな本を読むときでも同じだとはおもいますが、そんなことを意識しながら読むといいのではないかと思います。

アミの名言その1 ― 人類の現状に対する的確な指摘

ではここで、本のなかにたくさん登場するアミの名言の中でも、おそらく最も有名なものの1つと思われる言葉を紹介してみようと思います。

これまで数々の惑星や文明を見てきたアミは、次のように語ります。

あるていどの科学の水準に達した、でも、やさしさや善意の欠けた文明は、かならずその科学を自滅するほうに使いだすんだよ

[…中略…]

ある世界の科学の水準が、愛の水準をはるかにうわまわってしまったばあい、その世界は自滅してしまうんだよ……
エンリケ・バリオス著 石原彰二訳 さくらももこ絵 「アミ 小さな宇宙人(文庫版)」徳間書店(2005年)P.38~40より
今の人類の現状に対する、このシンプルでありながらも的確で説得力のある指摘は、一度目にするとなかなか忘れることが出来ません。


実際、アミの感想が書かれたほかのサイトの記事などを読んでみると、このフレーズが引用されている記事がたくさんあります。

その背景には、もしかしたら、私たちが無意識的に(人によっては意識的に)感じている危機感があるのではないかと思います。

人々の科学力が、せいぜい火を起こしたり、石の槍をつくることが出来る程度のものであれば、その力を悪意を持って使ったとしても、その影響が地球を滅ぼすようなことはありません。

しかし、現在の人類は、地球に壊滅的な被害をもたらすのに十分な核の力や、地球全体の生態系に悪影響を及ぼすレベルの化学物質をつくりだす力を持っています。

そして、過労死する人や自殺する人が出ても、そんなことはほとんど気にもとめずににお金儲けへと突き進む、やさしさや善意が欠けているとしか思えない経済システムを世界的に構築しています。


特に核の力は、たとえ悪意がなかったとしても、ちょっとしたことが大きな破壊へとつながりかねない力です。

私たちは、その力で大きな被害を受け、その被害も実質的にはまったく収束していないような状態です。

にもかかわらず、本来は幸せで豊かな生活の為の手段でしかないはずのお金を究極の目的としてしまい、それを輸出しようなどという話がでています。

こんなことを言うと、

「世の中そんなに単純じゃないよ」

こんな声が、世間の賢そうな大人たちと、そして何よりも自分自身の中の大人の部分から、聞こえてきます。

そんな子供みたいな単純な考えではやっていけないと主張してくるのです。

もちろん、私たちは必要があって大人へと成長するのですから、いつも子供では困ってしまうかもしれません。

しかし私たちは、もう少し真剣に、子供のような言葉に耳を傾けるべきかもしれません……。

大人であることと、子供であること。そのどちらかが正しいと言いたいのではありません。

大人でありながら、子供であること。そして、子供でありながら、大人であることこそが必要なのだと思うのです。
もし私たちが、このまま子供のような純粋さや、善意や優しさバカらしいものとして無視し続けたらどうでしょう?

自分の純粋な気持ちを無視して生きることや、狡猾に振る舞うこと、そして人を気づかう余裕もないほどに追い込まれながら必死に競争することを正しいとする価値観を続けていったらどうでしょう?

そのとき、私たちの住む世界は本当に住みにくいところになってしまうかもしれません……。

アミの名言その2 ― 人生に起こる問題に負けずに、幸せに生きるには?

ここでは印象的だった例として、私たちの社会に対する的確な指摘を取り上げました。

他にも、物語の中には明るい未来を感じられる言葉や、個人の幸せにつながるような言葉もたくさん出てきます。

機会があれば、そんなテーマの記事も書いていきたいと思っていますが、この記事ではあと少しだけアミの言葉を紹介して終わりにしたいと思います。


では次に、自分の人生や社会が、問題で山積みになってしまっていると感じて心が重くなってしまったとき、もしかしたら、その問題を別の視点から捉えることが出来るようになるかもしれない言葉を紹介しましょう。
主人公のペデゥリートがアミの宇宙船に乗せてもらって、地球よりも進んだ惑星に連れて行ってもらったとき、その惑星の誰もが幸せそうにしているの見て、ペデゥリートが問いかけた疑問に対するやりとりです。

「どうしてみんな、あんなにうれしそうなの」

「生きることを楽しんでいるからさ。それじゃまだ、なにか不足だとでも言うのかい?」

「でも問題は、かかえていないの?」

「ものごとを問題としてとらえるのでなくて、乗りこえるための自分じしんへの挑戦として解釈しているんだよ。だからここではみんな元気だ」
エンリケ・バリオス著 石原彰二訳 さくらももこ絵 「アミ 小さな宇宙人(文庫版)」徳間書店(2005年)P.138より
なにかを「問題だ」と捉えている自分に気づいた時、その問題を、より大きな幸せを生きるための挑戦なのだと捉えなおすことができれば、人生は飛躍するかもしれません。
もちろんそれは、自分には大きすぎる課題に無謀にも体当たりしていくことではありません。
時には、問題を回り道して進んでいくこと、問題と思っていることと共存する道を探ること、あるいは問題から逃げる勇気をもつことすら、乗り越えるべき挑戦かもしれません。

では、いったいどのようにして、自分の進むべき道を見極めればいいのでしょうか?

その答えは、アミの語る「よいことと悪いことの区別」する“宇宙の基本法”にあるかもしれません……。

アミは、“宇宙の基本法”について次のように語っています。

もしこの法を知らないと、よいことと悪いことの区別が、はっきりとつかないんだよ。多くのひとがよいことをしていると思いこんで、ひとを殺す。この法を知らないからだ。また、別のひとはひとを拷問にかけたり、爆弾を仕掛けたり、武器を発明したり、自然を破壊したり……でも、みんな、大きな悪事をはたらいていながら、だれも悪いことをしていると思っていない。なぜなら、それは、みんなこの宇宙の基本法を知らないでいるからだ。たとえ知らずにおかしたのであっても、自分たちの暴力のつぐないは、いつか自分たちで支はらわなければならなくなってくる

[…中略…]

地球のひとがこの法を知って、ただそれを実行するだけで、もう地球がほんとうの天国に生まれ変わるのにじゅうぶんなんだよ……
エンリケ・バリオス著 石原彰二訳 さくらももこ絵 「アミ 小さな宇宙人(文庫版)」徳間書店(2005年)P.130より

では、“宇宙の基本法”とはいったい何なのか?

興味のある方は、是非、「アミ小さな宇宙人」を読んでみてください。

おわりに

普段は、あまり夢物語のようなテーマについては触れずに、明るい夢は持ちながらも、目の前の小さな一歩を現実的に進むことを意識した記事を書いています。

しかし今回は、子供の物語として見逃してしまってはもったいない本だと思ったので紹介させていただきました。

この記事では、印象的だったアミの名言を紹介しましたが、この本を読んでいると、ストーリーの流れの中ででてくる何気ない一言に感心させられるということが少なくありません。

ですから、ストーリーの流れから切り離された部分的な引用で、アミの名言を紹介するのはなかなか難しいところがあります。

その意味でも、もし興味があれば、本を読んでみることをお勧めします。

アミ小さな宇宙人 (徳間文庫)もどってきたアミ―小さな宇宙人 (徳間文庫)アミ 3度めの約束―愛はすべてをこえて (徳間文庫)

(3巻とも文庫版が出ていますので、3冊併せても少し高いハードカバー1冊くらいの値段で買うことが出来ます。)
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