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「人を動かす」ではダメな、3つの理由

1週間と少し前の7月6日。偶然、ダニエル・ピンク氏の新しい本が出ていることを知りました。

このサイトの記事でも何度か参照させてもらっている『モチベーション3.0』の著者でもあるということもあり、お世話になっているお礼という意味も込めて、購入してみることにしました。

さっそく読み始めてみると……。

驚くことに、そこにはなんと、この本と出会う少し前の6月28日に公開したばかりの物語『真実の人生』と、びっくりするほどシンクロする内容が書かれていたのです。

不思議な縁もあるものだなということで、今回はこの本を書評しながら記事を書いてみようと思います。

まだ、1回軽く目を通しただけなので理解が不十分なところがあるかもしれませんが、その点はご了承頂ければと思います。万が一、誤りなど見つけられた場合には、教えていただけると幸いです。

ダニエル・ピンク著 神田昌典訳 『人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!』

では、まず初めに、簡単にその本を紹介しておこうと思います。



タイトルは、『人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!』。

著者は、ダニエル・ピンク氏。訳は神田昌典さんとなっています。

「セールス?なんだ、そんな話か……。」

そう言って、ページを閉じてしまうのは、ちょっと待って下さい。

この本は、見かけ上「セールス」や「売り込み」に関わっていない人ほど必要な本であるとも言えるのです。

同書の中で触れられている「売らない売り込み」を含めた「人を動かすスキル」は、現在を生きている私たちにとって、誰も避けることの出来ない重要な能力だというのです。


例えば、ある歯医者さんが、自分の患者さんに対して、歯の健康を守るために歯磨きをしっかりとやるように説得しようとしているとします。

これは、決して直接的に何かを売ろうとしているわけではありませんが、「歯をしっかりとメンテナンスする」というアドバイスを実行するように売り込んでいると言うことも出来ます。

これが、「売らない売り込み」です。

このような「売らない売り込み」は、私たちの日常の中に溢れています。

例えば、仕事で上司に自分のアイディアを採用してもらうこと、趣味の仲間を集めること、子供に勉強の意義を理解してもらい、取り組んでもらうこと……。

数えはじめれば、きりがありません。

そして、著者のダニエル・ピンク氏と、クァルトリクス社という会社による9057人もの人に対する共同調査によって、次のようなことがわかったそうです。

この結果は、主にアメリカのフルタイム勤務者を代表する結果だということですが、日本の状況も、それほど遠いものではないでしょう。

  1. 現在、職場で過ごす時間の四〇%が、売らない売り込み――購入行為に誰一人関与せずに、他人を説得し、影響を与え、納得させること――にあてられている。広範な職業にわたって、一時間ごとに約二四分が人を動かすことに費やされている。
  2. たとえからりの時間を費やす必要があるとしても、この側面は仕事で成功を収めるうえで不可欠だとみなされている。
ダニエル・ピンク著 神田昌典訳 「人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!」講談社(2013年)P.31より
なんと、仕事時間の40%が「売らない売り込み」の為に使われているといいます。そして、この「売らない売り込み」は仕事を成功させるうえで必要不可欠だとみなされているというのです。

つまり、なにかを実際に売るセールスをしている場合はもちろんのこと、一見セールスや売り込みとは何の関係もないように見えることをしている場合にも、「人を動かす力」が必要になるというのです。

“和楽”を実現するための、重要な能力

この「人を動かす力」の重要性については、私もその通りだと思います。

私が『真実の人生』を公開した、わかりやすい表の理由の1つは、まさにこの部分です。

既にいくつかの記事で書いていますが、当サイト「和楽への道」の“和楽”は、世間一般で使われている意味とは少し違うかもしれませんが、次のような意味を象徴しています。

和:調和(バランス,協調),平和,和やか,和(足し算→統合,全体性)
楽:楽しい(情熱,没頭,集中),気持ちや体が楽(リラックス,力が抜ける,安心・安全・健康),楽々と(無理なく,スムーズに,自由・無制限に)
『真実の人生』という物語も、このサイトの記事も、大きな視点から見れば、この「和楽」の実現のために書かれています。

そして、この「和楽」を人生の中で実現していくためには、「人を動かす能力」は避けては通れない、非常に重要な能力になるのです。

そのことは、『真実の人生』をお読みいただければわかると思いますし、ここでその話を書き出すと記事が非常に長くなてしまうので、ここでは詳しく触れないことにします。

(『真実の人生』をお読みいただきたい場合は、 こちらよりダウンロード申し込みが可能です)

また、「和楽」を実現するために、より本質的に必要となるのは「人を動かす」とは似てはいるもののまったく異なるものなのですが、そのことは後ほど触れますので、ここでは便宜的に「人を動かす」と表現しておこうと思います。
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「Always Be Closing」から、「調和あるコミュニケーション」へ

「人を動かす能力」≒「セールス」や「売り込み」の能力が重要だということはわかった。

しかし、「セールス」「売り込み」と言われると、よくないイメージを持ってしまいがちなのも、また事実です。

裏表があり、自分の利益のためなら平気で不誠実なことをして、強引に契約に持っていこうとする……。

そんなイメージがあるのではないでしょうか?

「ABC」

これは、どういう意味かわかるでしょうか?

Always Be Closing(必ずまとめろ契約を)」という意味の、セールスの世界で使われる金言だそうです。(同書 P.4より)

これでは、嫌われても仕方がありません。

しかし、ダニエル・ピンク氏によれば、セールスという言葉が持つネガティブなイメージは、決してセールスの本質からくるものではないということです。
「Always Be Closing(必ずまとめろ契約を)」は、すでに時代遅れになり、より誠実で人間味のある方法でなければ上手くいかなくなってきているといいます。

同書の最後には、次のようなことが書かれています。

誰かを動かそうとするときはいつも、真のサービスの核心となる次の二つの質問に必ず答えられるようにしよう。

  1. 自分の売り込むものを相手が受け入れると承諾した場合、その人の人生は向上するだろうか?
  2. このやり取りを終えたとき、世界は当初よりよいところになるだろうか
質問に対する答えがどちらか一つでも「ノー」ならば、あなたは間違いを犯しているのだ。
ダニエル・ピンク著 神田昌典訳 「人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!」講談社(2013年)P.248より
これは、私もその通りだと思います。

実践するのは決して簡単なことではありませんが、私も、私自身と、相手と、世界の為になる生き方が出来たらと思っていますし、『真実の人生』の中にも、そのことはそれなりのページ数を割いて盛り込みました。

では、「Always Be Closing(必ずまとめろ契約を)」に取って代わる原則はないのでしょうか?

ダニエル・ピンク氏は、新たなABCとして、「同調(Attunement)」、「浮揚力(Buoyancy)」、「明確性(Clarity)」を挙げています。(同書 P.82より)

「同調」――“力を手放すことによって力を得る”

「同調」というのは、相手の立場に立ってものを見たり(=「視点取得」)、意図的に相手と似せた振る舞いをすること(=「模倣」)などによって相手と自分の波長を合わせることだといいます。

このように、強い自分を持ち、自分を押し通そうとするのではなく、相手に同調することが、これからの時代に「人を動かす」うえで大切になるということが、豊富な社会科学や心理学の調査結果に基づきながら書かれています。


これは、基本的には、その通りだと思います。

特に、“力を手放すことによって力を得る”という考え方は、人を動かそうという場面に限らず適用できる、人生の本質的な概念だと思います。

ただし私は、真に同調すべきは「動かそうとする相手」ではなく、他に存在していると考えています。
このことについては、また後ほど触れたいと思います。

また、私は無意識のうちに親しい人の口癖や仕草が移ってしまうことがあっても、あまり意図的に模倣するという考えは好きになれませんが、円滑な人間関係を築くための社交辞令の延長だと考えれば、頭から全否定すべきことでもないのかもしれません……。

「浮揚力」――“重力と抗力のハーモニー”

「同調」次は、「浮揚力」です。

「人を動かそう」と思った時、人は多くの拒絶や無関心、批判と出会うことになります。この本の中では、これを「拒絶の大海」と呼んでいます。

まるで、人を下へ下へと引っ張る重力のように、人をネガティブな方向へと引っ張っていく、このような「拒絶の大海」に打ち勝ち、上へと昇っていく力が「浮揚力」です。

興味深いのは、この重力を全く感じられないのもよくなく、そんな場合には、地に足がついていない状態になってしまうのだそうです。
そして、この「重力」と「浮揚力」の調和をとるためのテクニックとして、「疑問文形式のセルフトーク」、「説明スタイル」(出来ごとから受け取り方・解釈・体験)を変えること(これが、「学習性無力感」を克服することにもつながる)、そしてときには「重力」に身をゆだね「ネガティブになることも忘れないようにする」ことなどが紹介されています。

「明確性」――“「問題解決力」から「問題発見力」へ”

そして最後に、「明確性」です。

ここで強調されているのは、「問題解決力」から「問題発見力」へのシフトです。

【 参考記事 】
与えられた問題に対してロジカルに答えを出す「還元主義的でアルゴリズム的な技術者的問題解決スキルよりも、クリエイティブでヒューリスティックな芸術家的問題発見スキル」が必要だというのです。(同書P.144より)

まだインターネットが発達していなかった時代には、何かを比較検討しながら買おうと思えば、お店に行って販売員にいろいろと訊ねる必要がありました。しかし、いまでは価格比較から機能比較までインターネットで調べることが出来ます。

だから、聞かれた質問に的確に答えられる「問題解決能力」の重要性が低くなり、相手が抱えている「真の問題を発見」し、クリアに伝える「明確性」が必要になるというのです。

「人を動かす」ではダメな、3つの理由

ダニエル・ピンク氏の新著『人を動かす、新たな3原則 売らないセールスで、誰もが成功する!』。

ここまで読んできて、たくさん勉強になることはありましたし、全てとは言わないものの、多くの部分は同意できるものでした。

しかしこの記事のタイトルは、あえて少し過激に、『「人を動かす」ではダメな、3つの理由』としました。
「人を動かす」という意識では、「和楽」を実現するためには不十分だと思うからです。
もちろん、「人を動かす」ことが必要な場面もあるかもしれません。しかし、「人を動かす」が“まずありき”ではダメなのです。

とはいえ、決してこの本に挑戦しようというのでも、否定しようというのでもありません。

むしろこれから書くことは、ダニエル・ピンク氏の主張と根本から矛盾するというようなものではないと思っています。

どちらかといえば、缶コーヒーを横から見れば長方形に見え、上から見れば丸く見えるのと同じように、ただ違う角度から見ただけというイメージの方が近いかもしれません。

この本に対してというよりも、一般的な概念としての「人を動かす」という意識に対してという意味で、「人を動かす」ということに意識がいき過ぎると良くないので、あえて少し過激なタイトルにさせてもらったのだとご理解いただければと思います。

では、その3つの理由を説明していきましょう。

理由その1 : 人を変えることは出来ない

まず第1の理由は「人を変えることが出来ない」ということです。

いくら誰かが誰かを説得しても、それは変わる「きっかけ」をつくっているだけに過ぎず、最終的に変わることを決められるのは本人だけです。

この「人を変えることが出来ない」ということについては、同書の中にわかりやすい例がのっていたので、要約して紹介しましょう。

勉強が苦手で、1度も作文を書いたことがなく、卒業が難しい状態に陥ってしまっていた生徒に、その生徒が興味を持っているアメフトについての作文をするように持ちかけた結果、アメフトについての作文を書いてきたばかりか、自習的にもう1つの作文を提出してきたということがあったそうです。その生徒の母親は、その2通の作文を見て涙したそうです。(同書 P.51~52より)
これは、「受け入れやすい変わるきっかけ」を与えた結果、「人が自ら動いた」ということができるでしょう。
この第1の理由は、比較的わかりやすかったと思います。

理由その2 : 「人を動かす」のではなく「人とつながる」

では、「人を変える」ことは出来ず、「変わるきっかけを与える」ことしか出来ないとしたら、手を変え品を変え、相手の視点に立った最善のきっかけを与え続けても、その人が動かなかった場合にはどうすればいいのでしょうか?

無理やり受け入れさせる?それとも洗脳する……?

もしそんなことをすれば、それは人間の尊厳を踏みにじる行為です。

そうだとすれば、「拒絶の大海に沈まない浮揚力」を身につけ、きっかけを与え続けるしか方法はないのでしょうか?

それも1つの手ではありますが、他にも手はあります。

それは、変わりたくないという人を動かすことにこだわるのではなく、「変える必要がない相手」や「自分が与えられるきっかけを必要としている相手」とつながるという方法です。
この方法は、動きたくないという相手をなんとか動かそうとするのではなく、そのまま受け入れることだとも言うことができます。

その方が、お互いにストレスも少ないでしょう。

もちろん、疎遠になることもあり得るでしょうが、何十億人もの人が住むこの地球で、わざわざ合わない人と親密にしなければならないということもないでしょう。


少しわかりずらいかもしれないので、例を挙げて説明しましょう。

例えば、ある会社に勤めている人がいるとして、その人にはどうしても成し遂げたい仕事があったとします。そこで、新規事業を起こさせてくれるように、会社に働きかけました。

しかし、会社はその事業を始めることを認めてくれません。

会社側の視点に立って考えて、その事業に大きなメリットがあること、リスクは最小限に抑えられることなどを、とてもわかりやすくプレゼンテーションしました。

そして、誰もが薄々「まずい」と感じながらも明確には意識されていなかった、会社が抱えている隠れた問題点をクリアにしたうえで、その事業がその問題の解決に繋がることも伝えました。

「最初は相手にしてもらえなくても当たり前」と考えて、ネガティブに考えてしまい過ぎないように心掛け、タイミングを見計らって、あまりにも迷惑にならないように気遣いながらも、説得を繰り返しました。

それでも、会社側は興味を示しません。
もしそうであれば、会社を動かそうと努力し続けるのではなく、その事業を必要としている別の会社と繋がればいいのです。

もちろん、ちょっと意見が受け入れられなかったり、少し嫌なことがあっただけで転職を繰り返せという意味ではないので、誤解のないようにお願いします。

そして、このように「つながるべき相手」へとつながっていくことは、自分の周りの世界を「新しい世界へとつくりかえていくこと」だと言うこともできます。
このことについては、別の記事『もし、望み通りの世界をつくることが出来たら……?』が参考になると思いますので、こちらをご参照いただければと思います。

理由その3 : 同調するのは他の誰かではなく、まずは自分自身から

そして最後に3つ目の理由は、人を動かそうとする前に、まず動かすのは自分だということです。

これは、「人を変えることは出来ないのだから、自分を変えるしかない」と捉えることもできます。しかし、決してそれだけの意味ではないのです。

『人を動かす、新たな3原則』の中では、他者と同調する能力の重要性が強調されていました。

誰かに同調する能力が大切であることはその通りだと思います。

しかし、それよりもまず先に同調しなければならないのは、偽りのない自分自身です。

まず最初に、つながり、受け入れ、同調するのは、偽りのない真の自分自身なのです。
神秘的な表現が好きな人は、宇宙が与えた自分自身の真の存在意義に身をゆだねるのだと理解してもいいでしょう。

これは、少しわかりずらいと思います。

しかし、この順序を間違えると、大きな落とし穴にはまってしまうことになりかねません。「自分が望まない“つながり”」が生まれ、「自分が望まない世界」をつくりだしてしまう可能性があるのです。
詳しくは、『真実の人生』をお読み頂くのがよいと思いますが、ここでも簡単に例を挙げて説明しましょう。

例えば、「理由その2」で、“ 「人を動かす」のではなく「人とつながる」”ということを書きました。

しかし、その前に、真の自分自身と同調していなければ、本当につながるべき相手とつながることも出来ません。

なぜならば、本当に生きるべき自分自身の姿を見出していなければ、どんな人がつながるべき相手なのかもわからないからです。

それは、自分が何を食べたいのかをわかっていなければ、どの店に入っていのかがわからないということに似ているかもしれません。

しかし、逆に言ってしまえば、自分が何を食べたいのかさえわかっていれば、あとはその店に足を運ぶだけです。

最初に自分とつながり、そして、つながるべき相手とつながり、新しい世界をつくっていく。

この順序が大切だと思うのです。

何度も宣伝になってしまい恐縮ですが、無料でダウンロード出来ますので、詳しくは『真実の人生』をお読み頂ければと思います。

最後に感謝。ありがとう!

最初にも書きましたが、『真実の人生』公開直後のこのタイミングで、『真実の人生』の内容とシンクロする部分の多い本、それも世界的大ベストセラー作家の本に出会えたことは、とても心強いことだと感じます。




別の記事で何度か取り上げさせてもらっている『モチベーション3.0』のことも含めて、ダニエル・ピンク氏に感謝を送りたいと思います。

ありがとう!
ただ、このところダニエル・ピンク氏に関する記事が多くなっている気もしますが、ここは彼のファンサイトというわけではないので、その点は悪しからずよろしくお願いします。
warakunomichi