あなたは、あなたの能力を眠らせたままにしてしまっていませんか? 走る能力、重いものを持ち上げる能力、人を惹きつける話をする能力、難しい計算する能力、感動的な絵を描く能力、etc……。
人間は様々な能力を持っています。
そして、その能力を十分に出し切ることが出来れば、人生はまったく変わったものになるでしょう。
しかし、現実はどうでしょう?
自分の能力を100%出し切れていないと感じている方が多いのではないかと思います。 もしかしたら、あなたもそう感じているかもしれませんし、私自身も思い当たる節がないと言ったらウソになります。 しかし世の中には、常に自分の能力を出し切ることを求められる人たちがいます。
例えば、プロスポーツ選手。
彼らは、ある種の人間の限界に挑戦し続けている人たちです。
そんな彼らは、身体能力や技術・技能を高める為のトレーニングは当然のこととして、「メンタルトレーニング」や「スポーツ心理学」のような心を鍛えるトレーニングにも力を入れています。 今回の記事では、
メンタルトレーニングやスポーツ心理学の考え方を参考にしながら、自分の能力を出し切る方法 について考えるとともに、
【引き寄せの法則をちょっと科学的にシリーズ】の2番目の記事として、「引き寄せの法則」との関連性 についても考えてみたいと思います。
ミスが続くとき、あなたならどんなことを意識する?
私は学生時代、テニスをやっていました。
画像:“Tennis in the Rain” by Ingrid Taylar もちろん、プロを目指すようなチームに所属していたわけではなく、半分体育会で半分サークルのような微妙なチームに所属していました。
私のテニスの実力はチーム内でも最低レベルでしたが、テニスに取り組む態度だけは周りからも認められていたと思っています……。
当時の私は、少しでも実力不足を補おうと、学内で開かれていた授業や、本やネット記事などでスポーツ心理学について学びました。
その時学んだことのひとつに、今でも役立っている考え方があります。
こんな場面を考えてみましょう。
【考えてみて下さい】 あなたの友人はテニスをしているのですが、その日は調子が悪く、打つ球、打つ球がネットに引っかかってしまっています。 画像:“#Tennis” by Jenni C そんなとき、あなたなら、その人に何とアドバイスするでしょうか?
あるいは、自分自身がそんな状態だったとしたら、自分自身ににどんな言葉を言い聞かせるでしょうか? どうでしょうか?答えは思いつきましたか?
もしかしたらあなたは、
「今日はちょっとネットしがちだね。気にしてても仕方ないから、気持ちを入れ替えてネットしないように気をつけよう!」
というような声をかけるかも知れません。
一見、気持ちを沈ませないように注意しながら改善点も伝えている、無難なアドバイスのように聞こえます。
この何の問題もないように聞こえる声がけですが、実は、スポーツ心理学の教えるところによればNGなのです。 いったい何がNGなのでしょうか?
スポーツ心理学が教える、ミスが増える意識の持ち方
その説明に入る前に、もうひとつ取り組んでいただきたいことがあります。
【やってみてください】 今からしばらくのあいだ、下に書くことを絶対に心に思い浮かべないようにしてください。
……準備はいいですか?
絶対に、イメージしないでくださいね。
では、はじめます。 - ほかほかと湯気をたてている、おいしそうな炊き立てのごはん
- 愛くるしい仕草で、毛糸のボールにじゃれている子猫
- 太古の時代を思わせるような大木の森を抜けると見えてくる、心が洗われるかのように青く透通った美しい湖
いかがでしたか?
こう言われて、あなたの頭の中に浮かんだのは、いったいどんな光景でしたでしょうか?
おそらくあなたは、上に書かれたような光景を思わず思い浮かべてしまったのではないでしょうか?
絶対に思い浮かべないで下さいとお願いしたにもかかわらずです(笑)
なにが言いたいのかといえば、「○○しないでください」というふうに否定形の形で声をかけると、人はついついその○○を思い浮かべてしまうということです。 ですから、
「ネットしないように気をつけよう!」 という風に声をかけると、ついつい自分の打った球がネットに突き刺さる場面をイメージしてしまいがちになってしまいます。
そして不思議なことに、なぜか人は「自分の打った球がネットに突き刺さる場面」をイメージしてしまうと、本当にその通りのミスをしやすくなる傾向があるのだとスポーツ心理学は教えます。 画像:“Aggie Women’s Tennis – 53” by Stuart Seeger 実は、このことについては誰でも手軽に実体験できる実験があるのですが、それについては別の記事で紹介しようと思います。
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手が勝手に動き出す!?想像と意志の不思議な関係【引き寄せの法則をちょっと科学的に3】 自分の体が勝手に動き出す体験は衝撃的だと思いますので、是非、体験してみていただきたいと思います。
水があふれそうなコップを、こぼさずに運ぶには?
実際に体験する方法は別の記事に譲るとして、ここでは、もう少し他の例を紹介したいと思います。
想像してみてください。
あなたは水がなみなみと入ったコップを持っています。
「こぼさないように」と意識すれば意識するほどに、なぜか腕が震えてしまい、水面が揺れてしまったということはないでしょうか?
そうして波立つ水面を見ていると、不思議なことになぜかさらに手が震えてしまったという経験もあるかもしれません。 これは、先ほどの理屈から言えば、
- 「こぼさないように」と意識することで、水がこぼれるイメージを浮かべてしまう
- 水がこぼれるイメージが浮かんだ結果、本当に手が震えてしまう
- さらに、揺れる水面を見ていると、水が揺れるイメージが強固になり、もっと手が震えてしまう
と説明することができます。
まさに、「ネットしないように!」と意識すると、ますますネットを意識してしまってミスが増えてしまうという現象にそっくりです。
スノーボードのターンを習得するには?
他にも、先ほどの例ほど「イメージ」と「結果」が直接的に結びついている訳ではありませんが、似たような現象はたくさんあります。
例えば、あなたが自転車に乗っているとき、道の端にフタのされていない側溝が見えてきたとします。
危ないなと思って、その側溝を見ていると……。
なぜか吸い寄せられるようにそちらに向かって進んでしまい、どうしようもなくなってブレーキをかけてしまった。 そんな経験はないでしょうか?
あるいは、スキーやスノーボードをしている場面を想像してみてください。
画像:“12 – Skiing – The Ridge Tahoe Resort Hotel” by Ridge Tahoe Resort Hotel コースの真ん中に生えている木を発見して、「避けなければ」と思って視野の中心において注視してしまうと……。
木を避けたいのに、なぜか体が勝手にそちらに向かって舵を切ってしまった。 そんな経験をしたことがあるかもしれません。
どちらもの現象も、自分の意思に関わらず、なぜか見ている方向に進んでしまうという現象です。 これを逆手にとって、スノーボードでターンをする練習をする時には、「曲がりたい方向を見るように」とアドバイスされたこともあるかもしれません。
スポーツ心理学が教える、より良いアドバイス
これらのことから考えると、ネットミスが多い人に最適なアドバイスは、どのようなものになるのでしょうか? もうおわかりだとは思いますが、それは、
「ネットしないように気をつけよう!」 ではなく、
「もっと高めの弾道を描くような玉を打とう!」 とか、
「しっかり振り切っていこう!」 というようなアドバイスになります。
なぜならば、「××しないようにしよう!」というように否定形のアドバイスをすると、人はついつい“××な状況”をイメージしてしまいまい、実際に“××な状況”になるように行動してしまいがちになるからです。
逆に、「○○するようにしよう!」と声をかけると、“○○な状況”を思い浮かべることができ、“○○な状況”になるような行動をとる傾向が強まるのです。 このような理由から、スポーツ心理学では、
「××しない」というような否定形ではなく、「○○する」というような肯定形で声をかるように と教えています。
ほんの少しの違いが、人生のわかれ道
「××しない」と意識することと、「○○する」と意識すること。 これは、ほんのちょっとした違いにしか過ぎません。
しかし、たったこれだけのことでも、自分の能力を目指す方向に向かって使うことが出来るのか、空回りさせてしまうのかに影響が出てくるのです。 もしかしたらあなたも、「××しない」の罠にハマってしまったことがあるかもしれません。 例えば、人前で話すとき。
「声が小さくならないように注意しよう」
「あせって早口にならないように……」 こんなことを考えていたら、どうなるか?もうおわかりですね? こんなときは、
「ゆっくり、大きな声で話そう」 です。
これは一度知ってしまえば、誰でも意識できるような簡単な違いにすぎません。
しかし、もし知らなければ、「能力はあるはずなのに、なぜか上手くいかない」と悩むことにもなりかねません。 もちろん、これだけがすべてだと言うつもりはありません。
それでも、こんな小さなことが、あなたが能力を出し切れるのか、それとも空回りさせるのかに影響を与えているとしたらどうでしょう? 今から「××しない」をやめて、「○○する」に変えるだけで、あなたの人生を変えてしまう可能性を秘めているのです。 メンタルトレーニング、スポーツ心理学と「引き寄せの法則」
ここまで、メンタルトレーニングやスポーツ心理学が教えてくれる、能力を出し切る方法について考えてきました。
ところで、
“○○な状況”を思い浮かべると、“○○な状況”になるような行動をとりがちになる というのは、いわゆる「引き寄せの法則」にそっくりです。
念のため、この
【引き寄せの法則をちょっと科学的にシリーズ】での引き寄せの法則の定義を確認してみましょう。
【 定義 】
「その人の“信じていること”、“考えていること”、“心に思い描いたこと”が、その人の現実になる方向へとはたらく作用」
スポーツ心理学が教える、
“○○な状況”を思い浮かべると、“○○な状況”になるような行動をとりがちになる というのはまさに、
「その人の“信じていること”、“考えていること”、“心に思い描いたこと”が、その人の現実になる方向へとはたらく作用」 の一種だと言うことができるでしょう。
もちろん今回の記事に書いた内容は、あくまでも、スポーツのような特殊な場面を想定した内容ですので、これをもって引き寄せの法則が一般的に成り立つと言うには無理があります。
また、スポーツ心理学やメンタルトレーニングで教えられていることだからといって、必ずしもそれが正しいとは限らないでしょう。
それでも、今回書いたようなことは、誰にでも似た経験があるのではないかと思います。
「イメージすることで、磁石のように現実を引き寄せる」などというような説明に比べれば、かなり真実味があったのではないでしょうか?
その意味で、【引き寄せの法則をちょっと科学的にシリーズ】のはじめに、「引き寄せの法則」を現実的に考えるための第一歩としては意味があったのではないかと思います。 では、次回につづきます。
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手が勝手に動き出す!?想像と意志の不思議な関係【引き寄せの法則をちょっと科学的に3】